泰夫の短歌集

泰夫の短歌集

短歌集(脳性小児麻痺・生きる・音楽)

康夫の短歌集(脳性小児麻痺・生きる・音楽)脳性小児麻痺はがね車椅子の鋼の骨の冷たきに手を触れわれのひと日始まる気力さえ衰えゆくと思いつつ緊張ほぐす薬飲みつぐガラス戸にあたりし雀の音にさえ動悸の止まぬわが病なり馬鈴薯とトマトの合いの子の出来る...
泰夫の短歌集

康夫の短歌集(生命あるもの・窓辺の四季)

康夫の短歌集(生命あるもの・窓辺の四季)生命あるものあきつ我が膝に止まれる蜻蛉の大き目に向いて温き陽の中にいる欄干に淡く小さき網を張るクモは幾日を生きいるならん夕べ閉じ朝花開くチューリップ生命あるものの営みを見つかまきり蟷螂の鎌ふり上げし亡...
泰夫の短歌集

短歌集(施設に暮らす・遠きにありて)

康夫の短歌集(施設に暮らす・遠きにありて)施設に暮らすとほころ窓の外の枝垂れ桜の綻びて北向き部屋に陽を分けくるるあした木漏れ日が廊下に流れ込む朝早出職員小走りに過ぐ平成六年、身体障害者療養施設「真清水荘」に入所し顔火照りストレッチャーに臥す...
泰夫の短歌集

短歌集(彼方・見送る・交信・電子の海)

康夫の短歌集(彼方・見送る・交信・電子の海)彼方アンケートにこたえし謝礼の図書券に「東北書店」の印押されありシベリアより幾日をかけて飛び来しか翼の白き斑ひかりてまだら独り座しライブカメラを映し出す摩周湖きょうは秋深く澄む宍道湖のほとりより届...
泰夫の短歌集

短歌集(独り居・夜・年)

康夫の短歌集(独り居・夜・年)独り居横臥して弁当をさじに掬い食う雨水の今日を雨しげく降るはかどパソコンのデバッグの作業捗らぬ独り居の部屋に雷鳴とどろく潮騒の音の入りたるレコードをひねもす聴きぬ遠き海見ておぼろなる水平線を船ゆけり故なく人の恋...
泰夫の短歌集

短歌集(静寂・水面)

康夫の短歌集(静寂・水面)静寂鶴啼く声のかそかに聞こえくるわが居る部屋のしずまりの中柿の葉もゆれずになりて小春日のおだやかに今日の一日暮れゆく電柱の一本ごとにかげりゆき動くものなく冬の日暮るる生き物の鳴く声ひとつせざる夜に目覚めてひとりの部...
泰夫の短歌集

短歌集(施設に暮らす・遠きにありて)

康夫の短歌集(施設に暮らす・遠きにありて)施設に暮らすとほころ窓の外の枝垂れ桜の綻びて北向き部屋に陽を分けくるるあした木漏れ日が廊下に流れ込む朝早出職員小走りに過ぐ平成六年、身体障害者療養施設「真清水荘」に入所し顔火照りストレッチャーに臥す...
泰夫の短歌集

短歌集(大和の国・瀬戸大橋)

康夫の短歌集(大和の国・瀬戸大橋)大和の国タイプにて脅迫状を打つ者ありわれは短歌をマヒの手に打つ墜落機に乗りいしは誰か泣き叫ぶ若き女性をテレビは写しぬ黒人を鞭に追い行く警官を衛星中継のニュースは伝えぬわが裡にも潜む宮崎勤あり語調荒げしテレビ...
泰夫の短歌集

短歌集(縁・友・恋)

康夫の短歌集(縁・友・恋)縁寒の水を好みいし祖父は麻痺われの入学を一人勧め給いき麻痺われの入学を拒みいし校長も職退きたりと人づてに聞く自らの悩みを吾に告げし後カウンセラーの女性はじらい笑う重障者わが入院を嫌うらし婦長の物言いは丁寧なれど車椅...
泰夫の短歌集

短歌集(大阪行・旅)

康夫の短歌集(大阪行・旅)大阪行わが乗れる車椅子をば担ぎくるる阿波座の駅員は軽しと言いて便所にて寝ていし人もあると言う友とゲーム機にもたれ微睡むまどろ藤色に明けゆく港に近づきて錨を下ろす船の間を行く地下鉄の長き階段をわが車椅子担ぎてくれぬ名...